フリュウ・ギャラリー – 谷根千のレトロなギャラリー

Blog

スタッフ日記

愉快なのはしかたない 「川原慶賀の植物図譜展」

埼玉県立近代美術館
ロシア科学アカデミー図書館所蔵 川原慶賀の植物図譜展」
見に行きました。
1494565928549新緑が美しい公園の一角にある美術館。

江戸時代の絵師「川原慶賀」のことは、博覧強記の古本屋カフェブーザンゴさんから教えてもらいました。
出物が見つかるこのお店で「鎖国の出窓を開く:出島の絵師 川原慶賀展」(会期は昭和55年、西武美術館<現存せず>と長崎県立美術館で開催)のカタログを紹介してもらって
DSCN2987病みつきの面白さの虜に…!というわけで見に行った次第です。

(左:西武美術館カタログ 右:今回埼玉県立近代美術館カタログ。このブログは、今回の埼玉近美カタログ内容が主な参照元です)

川原慶賀(1786-1862)は、シーボルトらオランダ人の注文により作品制作を多く行ったことで知られます。彼の作品は日本の風俗・植物などの日本研究の資料として持ち帰られたため、海外諸国にたくさん所蔵されているようです。だから両方の展示ともに異国の蔵書元が冠されているんですかね~。そして、長崎所蔵作品も現地でぜひ見てみたいです!

私がファンなのは断然「人の一生」シリーズ!江戸時代の、人が生まれて・見合いして結婚して・死んで墓に埋められる・送り火されるまでのシーン(他人の頭蓋骨出てくるし)を凝ったディテールで表現したイラストレーションの連作です。
結婚式や葬列などのモブシーンは楽しくてしかたない!
実は、今度フリュウで開催するジャポネスク展を考えるアイディアの一端にもなりました。

西武美術館のものはこれが主役でしたが、今回の埼玉のは植物画がメイン。
でもやっぱり「人の一生」シリーズ&年中行事シリーズは、展示構成前半の華として存在していました。
慶賀の飄々とした描き方にニヤニヤしちゃいます。美術館から虫眼鏡も借りれて、よく観れましたよ!

hitonoissho

死者を看取った医者が、帰り道であからさまにほっとしてたりして。
(カタログp.42掲載: 『人の一生』「死去」場面。場面右下、籠に乗り込む医者の顔が!)
えっ、全然見えない?それは…現地に行くか、カタログを買ってください!

この展示は埼玉では5/21までですが、この後下関市立美術館、長崎歴史文化博物館に巡回します。
(↑日曜美術館風に脳内再現して読む)

おっと、今回の主役の植物画ももちろん面白いですよ!博物誌用に描写されているのもツボです。
表されている植物は、長崎や九州由来のものが多いのか、南洋なものが目を引きました。
ハイライトがねちっこく入っているところは、シーボルトにより招聘された画家によるものだそうです。
実の担当、花・茎の担当、みたいに二人が描き分けしている絵が何枚かあり。
この両者の絵が共存することで、慶賀の持つ個性がわかりやすくなるのも興味深かったです。

totop